-one's home-



歌が聞こえる
やさしくて
心地よくて
ほんの少しだけ
寂しい歌


「おーい、ロマーノ?お昼できたでぇ、はよ出て来んと先食べてまうよぉ」
太陽が眩しく照り、雲一つない青空があたり一面広がっている気持ちの良い午後
俺は、出来立てほやほやの昼食を片手に君を探していた
「おっかしいなぁ、どこにもおらん。いつもはお昼になったらはよ作れってまくし立てるんやけどぉ。ほんま、どこ行ったん?」
今日は久しぶりに君の大好きなトマトたっぷりのパスタを作った
匂いに釣られて出て来るのではないかと淡い期待もしてみたが、一向に出て来る気配は無い
「しゃあないなぁ、探すか」
俺は手に持っていたパスタとエプロンをテーブルに置き、君を探しに行くことにした


「う~ん、部屋にもおらんし・・出かけたんかなぁ」
部屋の中は、脱ぎ散らかした服と一枚の写真だけで、君の姿は無かった
「あと残っとんのは、庭かぁ」
階段を降りながら俺は呟いた
庭には沢山のハーブや野菜、色とりどりの花が植えられていて君はよくそれを眺めてた
それを考えると、最初から庭を探せばよかったのではないかと思い笑えてくる
俺の頭は、こういう肝心な所ではあまり働かない
まぁ、はっきり言うとお腹がすいてて思考が鈍っているだけだけど
君を早く見つけて昼食を食べるため、俺は庭へ向かう足取りを心なしか速くした


ちょうど庭へつながる部屋のドアを開けたとき、声が聞こえてきた
それは、庭に近づくほど大きくなっていく
庭に出た俺の耳がとらえたそれは、綺麗な歌声だった
この歌は、故郷を懐かしむ歌
イタリアに代々伝わる歌だと君が言っていた
君は俺の家に来てからよく、故郷であるイタリアの方を向いてこの歌を歌っている
口ではいくら悪態をついて強がっても、やはり心の中は寂しいのだろう
君の部屋にある写真からもわかる
その写真に写っているのは楽しそうに笑うイタちゃんと君
後ろには、綺麗な青空と海が見える
写真をみつめながら君は言っていた、これ以外のものはすべて燃えてしまったと
もう、故郷を思い出させるものはこれしかないのだと
辛さと寂しさが入り混じった君の歌声を聞くと、なんだか心が痛くなる
まだほんの小さな子供なのに、なんでこんな戦いに巻き込まれなければならないのか
俺たちの戦いに巻き込まれて君は大切なものを失った
でも俺は、自分のしたことに後悔もしていないし悔いもない
そんなことを考えて立ち止まっている時間なんて無いんだ
戦わなければ負ける、失う、何もかも
今の俺に出来ることは、戦うこと、君を守ること
いつか、再び君が、弟達との楽しく平穏な生活を取り戻せるように



「・・・ロマーノ、その歌もっかい聞かせてくれへん?お昼食べた後でええから」
歌い終わった君に向かって俺は言った
この歌を、君の想いを、しっかりと心に刻み付けるために